スタッフブログ
アサヒグループ大山崎山荘美術館のスタッフが交代で山荘の日々を綴るブログです。展覧会に関する内容や山荘のこと、四季の庭園についてなど、美術館のさまざまな情報をスタッフがご紹介します。イベントの最新情報もこちらでチェックしてください。
ブログで大山崎山荘ツアー② ~琅玕洞(ロウカンドウ)とレストハウス~
ブログで大山崎山荘ツアー第2回目は、本館に入るまでに目にする、2つの建造物についてご紹介します。
1つ目は、美術館のシャトルバス停留所の前にあり、当美術館の入口でもある、琅玕洞(ロウカンドウ)という名のついたトンネル門です。
大山崎山荘は1912年に着工してから約20年の歳月をかけて、山を切り開き、道を整備し、建物から庭園の植樹に至るまで、すべて加賀正太郎が設計し、作り上げられました。琅玕洞もそのうちの一つです。
2004年に国の登録有形文化財に登録されています。
琅玕とは、最高級の翡翠など、暗緑色や青碧色の宝石のことを指します。森鴎外がナポリの青の洞窟のことを琅玕洞と訳しましたが、青々とした美しいもののたとえとしても使われる言葉です。
新緑の眩しいこの時期は、琅玕洞が一年の中でも一番美しく見える時期でもあります!
トンネルの内壁は焼過ぎ煉瓦を織り交ぜて装飾が作られています。
通り抜ける際に見ていただきたいポイントは、トンネルの出入口です。良く見ていただくと、両方のデザインが異なります。来られた時にぜひ実際に確認してみてくださいね。
そして、もう一つは現在レストハウスとして使われているこの建物。
大山崎山荘時代は「車庫」として使われていました。こちらも、国の登録有形文化財です。中に入って見てみると、車庫だったころの名残として、昔の扉と、ピットの跡を見つけることができます。
こちらも、ご来館の際にぜひ探してみてくださいね。
何気なく通り過ぎてしまうトンネル門とレストハウスですが、加賀正太郎の細部へのこだわりや当時の名残を見つけることができ、味わい深いものがあります。
美術館にお越しの際は、本館までの道のりもお楽しみいただければ幸いです。
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
(IK)
ブログで大山崎山荘ツアー① 大山崎山荘の名前と美術館ができるまで
ブログで大山崎山荘ツアーの第1回目をご覧いただき、ありがとうございます。
今日は、大山崎山荘の名前と、美術館ができるまでのご紹介です。
美術館の正式名称は「アサヒビール大山崎山荘美術館」。
美術館の本館は100年ほど前に建てられた洋館です。
作ったのは、関西の実業家・加賀正太郎(1888~1954)です。
加賀は、証券業や林業、不動産業等を営み、ニッカウヰスキー創業時の出資者の一人でもありました。
詳しくは
アサヒビール大山崎山荘美術館ホームページ・歴史
も、ご覧ください。
山荘建築の際に加賀正太郎は、文豪・夏目漱石に名前を依頼した、という記録が残っています。
加賀に招かれ、漱石は友人たちと建設中の山荘を訪れました。
その際のことを漱石は俳句にしています。
宝寺の 隣に住んで 桜哉
美術館のトンネル門の手前には、この句を刻んだ石碑が建っています。
その後、漱石からは名前候補の書いた手紙が届きました。
手紙には
「啓御山荘の名前を御約束しながら遅くなりて済みません考へんのではありませんが何にも頭に浮かんで来ないのです~中略~一応古い句などしらべてみましたが矢張り面白いと思ふほどのものも見当たりませんただ御約束ですから放つて置いたやうで申訳がないからそれを義務塞げに少々御目にかけます」
という文章の後、
水明荘、竹外荘、回観荘、空碧荘など、14個もの名前とその由来が書かれていました。
そして、「気に入らなければ遠慮は入りませんから落選になさい」と書き添えられていました。
漱石が山荘を訪れた時には、まだ本館は建築中でしたので、まだ見ぬ山荘に名前をつけることはなかなか難しかったのかもしれません。この文言を受けてなのか、加賀はどれも採用せず、自身で「大山崎山荘」と名付けました。
しかし、この話には後日談があり、加賀の死後、千代子夫人がその14個の中から「竹外荘」という名前を選び、門に掲げていたそうです。現在も、その門柱が残っています。
加賀が亡くなり、千代子夫人も亡くなった後、山荘は所有者が幾度か変わり、平成に入ると、取り壊してマンションを建てるという計画が持ち上がります。
地元有志の方を中心に保存運動が展開され、京都府や大山崎町から要請を受けたアサヒビール株式会社が、行政と連携をとりつつ山荘を復元することになり、安藤忠雄氏設計の展示棟「地中の宝石箱」を加えて、1996年に美術館としてオープンしました。
2006年には「夢の箱」と呼ばれる新棟も作られ、現在では年4回の企画展もお楽しみいただけます。
こうして、加賀正太郎が名付けた「大山崎山荘」は、「アサヒビール大山崎山荘美術館」として、現在に至ります。
美術館は今年で24歳。
まだまだ美術館としては若いですが、建物には約100年の歴史があり、本館や茶室など、6つの建物が国の登録有形文化財にも登録されています。
来週は、これらの大山崎山荘の建物をご紹介していきたいと思います。
長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
(IK)
「ブログで大山崎山荘ツアー」を始めます
5月になりました。
差し込む光も初夏の日差しに変化してきましたね。
外出自粛の今、ご自宅で美術館の雰囲気をお楽しみいただけるように、
このブログで美術館の建物をご紹介する、「ブログで大山崎山荘ツアー」を始めます。
アサヒビール大山崎山荘美術館の本館は、約100年前に建てられました。
敷地内には国の登録有形文化財に指定されている当時の建築物が点在しています。
こちらのブログで少しでも美術館の雰囲気をお楽しみいただき、美術館に来られたことのある方は、その時のことを思い出しながら、お読みいただければ幸いです。
第1回目は来週からスタートし、週1回程度で更新予定です。
休館状況の変化により、更新間隔が変わる場合もございますが、ご了承ください。
新人スタッフのつたない文章ではございますが、どうぞよろしくお願いいたします。