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スタッフブログ

アサヒグループ大山崎山荘美術館のスタッフが交代で山荘の日々を綴るブログです。展覧会に関する内容や山荘のこと、四季の庭園についてなど、美術館のさまざまな情報をスタッフがご紹介します。イベントの最新情報もこちらでチェックしてください。

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和巧絶佳展 作品ご紹介 その6

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和巧絶佳展 1万人目のお客さま

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和巧絶佳展 作品ご紹介 その5

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和巧絶佳展 作品ご紹介 その6

本日は「和巧絶佳展」で展示している作品の中から、見附正康氏、山本茜氏の作品をご紹介いたします。

・見附正康 Mitsuke Masayasu 

見附氏の作品は、石川県南部で焼き継がれている九谷焼のなかでも「赤絵細描」(あかえさいびょう)という技法を用いています。

アサヒビール大山崎山荘美術館の展示では、大小合わせて9点の作品が出品されていますが、そのうち5点の大きな作品は、自然光の入る部屋に展示されています。

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赤絵の大胆で動きのある模様に、遠くからでも目を引かれます。近づいて見ると、模様ひとつひとつが緻密に描かれた細い線の重なりで生み出され、線の密度により、グラデーションをつくりだしていたことに気付きます。

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《無題》(2019)(部分)

驚くことに、見附氏はデザインの下描きをすることはないといいます。コンパスや鉛筆でだいたいのあたりを付けた白い器面に、直接筆で描いていきます。細い線が描きやすいよう、自身で筆の毛をカットして整え、赤色の顔料をたっぷりと含ませることで、ムラのない均一な濃さで描くことができるそうです。

伝統的な技法と洗練された技術の中から生み出される線が重なり、幾何学的で遠近感のある独特な模様が造られます。

1975年に石川県で生まれ、子どもの頃から書道を習い、筆で絵を描くことが好きだった見附氏は、高校卒業後、父親の勧めで九谷焼技術研修所へ入学。伝統的な絵付け、成形、焼成などの技術を教わるなかで、赤絵細描と出合い、現在は、加賀市片山津に工房を構え、制作されています。

・山本茜 Yamamoto Akane

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《渦》(2020

古くから仏像や仏画の荘厳(しょうごん)に使われてきた金銀箔による装飾技法である截金(きりかね)は、その表面性ゆえに経年とともにいずれ剥落するものです。しかし、その美しさを「永遠にガラスの中に封じ込める」という、山本氏の信念と情熱によって独自の技法で生み出された截金ガラスの作品群。展覧会では10点を展示しています。

その中でも、山本氏の最新作《渦》は、鋭い円錐形のガラスの中に繊細な截金の模様が浮かびます。底は丸く削られているため、少しだけ浮いているようにも見え、隙間から青いガラスを通した光がこぼれ落ちます。

歩きながら見ると、硝子による屈折から作品の中に動きが生まれ、まさに截金が渦になり、ゆっくりと回っているように感じられます。
繊細な截金とガラスの複雑な輝きが融合した作品です。

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《渦》 2020 (部分)

また、この作品は、築約100年の本館・大山崎山荘のサンルームへと続く廊下の壁龕(へきがん)に特別に展示しており、窓から入る自然光によって作品のもつ雰囲気が変わります。当会場ならではの作品の姿をお楽しみください。

山本氏は1977年金沢市生まれ。京都市立芸術大学美術学部の日本画専攻を卒業。截金の重要無形文化財保持者(人間国宝)の江里佐代子氏に師事、さらに截金とガラスの表現の可能性を追究するため富山ガラス造形研究所で学び、2011年に京都市内に工房を構え、制作されています。

自然の光を通して見えてくる、アサヒビール大山崎山荘美術館ならではのお二人の作品を楽しみに、是非、美術館まで足をお運びください。

和巧絶佳展は125日までご覧いただけます。皆様のご来館をお待ちしております。

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和巧絶佳展 1万人目のお客さま

ただいま開催中の開館25周年記念「和巧絶佳展 ―令和時代の超工芸」は、本日1万人目のお客さまをお迎えしました。記念すべき1万人目のお客様は、滋賀県から親子でお越しのお二人です。

お庭や建物好きのご友人から「京都の美術館ならぜひここに」とアサヒビール大山崎山荘美術館を勧めてもらったそうです。お二人とも初めてのご来館でした。喫茶室の特製スイーツや、和巧絶佳展のヒールレスシューズを見るのも楽しみ!とのことで、ゆっくりと美術館をお楽しみいただければ幸いです。

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紅葉の美しい、芝生広場で記念撮影。

多くの方にご来館いただき、本当にありがとうございます。和巧絶佳展は125日(日)まで開催中です。来週には紅葉も見ごろになるかと思われます。皆様のご来館、お待ちしております。

IK

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和巧絶佳展 作品ご紹介 その5

本日は「和巧絶佳展」で展示している作品の中から、髙橋賢悟氏、池田晃将氏の作品をご紹介いたします。

・髙橋賢悟 Takahashi Kengo 

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flower funeral -goat-》(2019

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flower funeral -goat-》(2019)(部分)

flower funeral -goat-は無数の小花で羊の頭蓋骨を形作った作品です。アルミニウムの大きな花と、どこまでも咲いている小さな花、それらの薄さは驚異的な0.1mm

全体を埋め尽くしている小さな花は、実物の忘れな草を原型としており、実物の花は鋳造過程で焼失しますが、その形はアルミニウムに置き換わります。この技術は真空加圧鋳造と呼ばれています。花のひとつひとつを、膨大な時間と手間をかけて丹念に作っていく、その情熱と技術の確かさに、思わず息を呑んでしまいます。

制作者の髙橋氏は、鋳金(鋳造)という技法にこだわり、制作に取り組まれています。膨大な熱エネルギーが注ぎこまれた鋳型を割り、強さの中に柔らかさ、温かさがある作品に触れる感動は、生命が誕生したような感覚に似ていると言います。現代だからこそ存在する素材を選び、その素材美を追求し、新たな技法を生み出すことは今しかできないことであり、その覚悟や深さ、重さを作品に表現されているそうです。

髙橋氏は1982年鹿児島県生まれ。現在は東京藝術大学大学院美術学部工芸科鋳金研究室に籍を置き、研究と制作を続けています。

・池田晃将 Ikeda Terumasa

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Error403》(2020

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Error403》(2020)(部分)

Error403は螺鈿による無数の数字が並ぶ19㎝角の立方体です。

今回の展覧会に合わせた渾身の一作です。池田氏は「誰もこんなことをやったことはないし、自分としても挑戦的な作品」と話されています。

螺鈿の数字が止めどなく湧き上がり、流れ落ちるさまは、まるでデジタルの泉のようです。他の作品とは異なり、様々な大きさの数字と不規則な配置、ところどころ欠け落ちた立方体はSF映画の一場面を思い起こさせ、見る人を不思議な感覚に誘います。光の加減により螺鈿の色が美しく変化する様子をお楽しみください。

池田氏の数字螺鈿は、レーザーで貝殻をカットしており、技術も現代的です。現代テクノロジーと、作家の技と想像力の融合が、宇宙的な美しさの作品を生み出します。

池田氏は1987年生まれ。千葉県出身。「遺跡や宗教建築のような、細密の集積が生み出す荘厳さを求めて制作していて、古典的とも未来的ともとれない、現代の不確定な表情を映し出せればと考えている」という池田氏の今後の展開が楽しみです。

作品制作にかける強い想いと、想像をはるかに超える緻密な作業を経て作り出されるお二人の作品は、125日までご覧いただけます。

是非、美術館まで足をお運びください。皆様のご来館をお待ちしております。

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