魔術と呼ばれた釉薬の技は、得意としていた辰砂(赤)をはじめ、呉洲(青)や民藝調の海鼠、独自に造りあげた晩年の碧釉など多彩を極め、いずれも珠玉のような輝きをみせています。晩年には用を離れた陶彫や陶板も試みています。
形への飽くなき関心は、寛次郎を木彫や家具製作、書、文筆など、陶芸以外の分野にも踏み込ませています。著述の中で「新しい自分がみたいのだ-仕事する」と述べるように、自らに枠をはめることなく、晩年に至っても新たな分野に挑戦し続けたのです。
寛次郎の創作活動は、そのように奔放に繰り広げられましたが、いずれの作品にも、骨太な寛次郎の個性が色濃くあらわれています。寛次郎は名もない職人の質実な仕事を限りなく尊敬していましたが、自身の歩みはまぎれもなく自由な表現者に至るものでした。
この展覧会では、晩年の自由な境地を示す陶芸作品を中心に、初期や民藝期の代表作、木彫作品、デザインした家具やキセル、書などもあわせて約130点を一堂に展示して、表現者河井寛次郎の到達点を多面的に検証します。
また、新館では、印象派クロード・モネ
「睡蓮」連作ほか、寛次郎が深く関心を寄せたジョルジュ・
ルオー、パブロ・ピカソの絵画(アサヒビール所蔵)も
ご覧いただけます。
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アサヒグループ大山崎山荘美術館
9月25日(土)午後4時~
(先着30名、受付は午後3時~)
「遠き日の河井寛次郎」
鷺珠江(河井寛次郎記念館学芸員) |
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