
下段左より、《Sprinter》2011年、《Un samouraï vient》2012年、《シャネル侍着甲座像》2009年 CHANEL SAMURAI © Tetsuya Noguchi Collection: CHANEL K.K.
1980年生まれの野口哲哉は、樹脂やプラスチックなど、現代的な素材を駆使して古びた姿の鎧武者を造形し、それらの織りなす嘘とも現実ともつかない魅力的な世界観を構築する美術家です。南蛮渡来のシャネルのマークを家紋とした甲冑を身にまとった紗練家( しゃねるけ)の武者像《シャネル侍着甲座像》がある一方で、自転車に乗った武士が出陣するさまを描いた《着甲武人自転車乗車出陣影》は、当時あたかもそんな武者がいたかのように、巧妙に古びた画面を演出しています。
野口の作品世界の大半は、武士を主題にしながらも、実際には存在しない、彼曰く“でっちあげ”の世界なのですが、サムライ、甲冑への知識に裏付けられた空想世界はじつに豊かで、史実とのはざまを行き来するユニークで独創的なものとなっています。加えて、甲冑の表現の正確さや、サムライたちの立ち振る舞いは、格好良さのなかにも常に滑稽さや哀しさが漂っており、その姿は日々のくらしを送る私たち現代人とどこか通じるものがあります。
作家はまだ30代半ばで活動期間は短いとはいえ、コレクターは国内外におよび、展覧会出品作や個展の評価も高く、今まさに注目される美術家の一人です。本展は、一貫して鎧武者をモチーフに制作する野口哲哉の武者世界を紹介する初の試みとなります。
※練馬会場とは展示内容が一部異なります
※会期中展示替えを行います
1980年香川県高松市生まれ。1999年広島市立大学芸術学部油絵科入学。2000年頃から油彩画制作と並行して樹脂粘土を使用した立体作品の制作を開始。2005年広島市立大学大学院修了。
- 2007年
- 「現代アーティストによるLE MONDE DE COCO ―ココの世界」(シャネルネクサスホール、東京)TCAF(Tokyo Contemporary Art Festival)2007
- 2008年
- アートフェア東京2008、「NETWORK JAPAN PROJECT」(Inter Alia、ソウル・韓国)
個展「野口哲哉展~武士道とは夢見ることと見つけたり」(TCAF2008、ギャラリー玉英ブース) - 2009年
- 「医学と芸術:生命と愛の未来を探る」(森美術館、東京)
- 2010年
- 「BASARA」展(スパイラルガーデン、東京)、「甲冑の昔と今」(ギャラリー真玄堂、東京)
- 2011年
- 芝浦工業大学メインビジュアル担当、「ポジティブ・コンタクト 野口哲哉展」(松坂屋名古屋本店) 学院修了。