本展では、何でもない日常から出発して、意表をつく世界を生み出す2人の作家を紹介します。画家・日高理恵子は自宅の庭にある百日紅(さるすべり)を見上げ続け、ほとんど金工細工による細密な線刻画のような世界を描き出します。映像作家・さわひらきは、見慣れた自分の部屋の中に、辺境の地をらくだ、ぞうなど動物が旅して回る光景を導入し、部屋を未知の場所へとつくり変えます。
冬の大山崎山荘にはゆったりとした時間が流れています。忙しい日々から離れ、山荘にひととき身を置くことで、豊かな日常を取り戻す感覚にスイッチを入れる。本展は当館ならではの時空間を活かした展示をご覧いただきます。さわの映像作品は山荘である本館にて展示します。重厚な木を用いた部屋のアンティークな雰囲気と軽妙な味わいの映像作品を合わせてお楽しみください。樹を見上げて描いた日高の絵画は、安藤忠雄建築の新館、天窓がある空間にて展示することで、樹の枝が空に向かって突き抜けていくような印象を与えることでしょう。
また、日高作品は池の水面を見下ろして描いたクロード・モネの名作『睡蓮』と同じ空間にて展示します。2人の視点の違いや色による表現の違いにも着目ください。
日高理恵子
- 《空との距離Ⅵ》
2008年
麻紙、岩絵具
(240x240cm)
- 《空との距離Ⅶ》
2008年
麻紙、岩絵具
(240x240cm)
- 《空との距離Ⅷ》
2010年
3点組み
麻紙 岩絵具
(200x200cm)
さわひらき
- 《elsewhere》
2003年 映像作品
- 《airliner》
2004年 映像作品
- 《in here》
2005年 映像作品
- 《eight minutes》
2005年 映像作品
- 《trail》
2005年 映像作品

日高理恵子(ひだか りえこ) (1958年東京都生まれ)
武蔵野美術大学大学院にて日本画を学ぶ。東京在住。卒業以来一貫して樹を描く。日本画の画材を用いて描くが、日本画の公募展などでは発表せず、現代美術のフィールドで作品を発表してきた。細かく刻まれた線による独特な絵は、樹を下から見上げて描くこと、そして見えるものをしつようなまでにその通りに線描で繰り返し表現することから生まれている。1995年から一年間文化庁芸術家在外研修員としてドイツに滞在。現代美術のグループ展など世界各地で作品を発表している。今回は、自宅の庭に植えられた百日紅をモチーフとする近作の大型絵画と新作ドローイングを展示する。
さわひらき (1977年石川県生まれ)
高校卒業後、イギリスに渡りロンドン大学スレード校美術学部にて彫刻の修士号を取得。ロンドン在住。友人の手伝いでコンピュータのアニメーションソフトを使ったことがきっかけとなりビデオ作品を手がけるようになる。最初の作品『dwelling』(2002)は、アパートの部屋の中をジェット機が静かに飛んでいくという意表をついたイメージを表現し一躍注目を集める。室内の動くはずのないものを動かす映像等により、部屋をモチーフとする作品を世界各地で発表、好評を博している。今回は日本初公開となる作品から新作まで含め8点を公開する。
新館ではクロード・モネ『睡蓮』、本館では民藝の逸品をご覧いただきます。 クロード・モネ『睡蓮』 1914年~1917年 200×200㎝ |
![]() |