本展は、「大山崎山荘」のオーナーであり、設計者でもあった加賀正太郎(1888-1954)が、日本人として初めてスイスアルプスの高峰・ユングフラウ登頂を果たして100周年となる節目を記念して開催するものです。
本展では、ユングフラウ登頂時の記念すべき品々と合わせて、加賀が心血を注いだ《蘭花譜》、そして河井寬次郎、濱田庄司、バーナード・リーチなど、民藝運動に参加した作家の作品や、印象派の巨匠であるクロード・モネの《睡蓮》など、当館選りすぐりの名品に加えて、スイス人画家であるパウル・クレーの絵画作品や、アルベルト・ジャコメッテイの彫刻作品など、スイスに関わる特別展示も行います。
加賀は証券業、林業などの経営に加え、アサヒビール社とも縁の深いニッカウヰスキー設立の出資者のひとりであり、明治から昭和にかけて活躍した実業家です。一方、同時に「数奇者」としても知られ、外国が遠い異国であった時代に洋行を重ね、アルピニストとしての足跡を遺し、イギリスで目にした建物に感銘を受けて、自らここ大山崎の地にチューダー様式の山荘を建てました。そして1万鉢にものぼる洋蘭を栽培し、その美しさを学術的記録として遺すために、日本の伝統的な浮世絵技法を用いた多色摺木版画《蘭花譜》の制作指揮を執っています。このように加賀は単に実業家という枠組みだけでは測れない側面を合わせ持っていた人物でした。
2年後のユングフラウ鉄道全線開通100周年の流れとも相俟って、意義深い展覧会となるものと期待されます。
- 《ユングフラウ頂上に立つ
加賀正太郎》
1910年 ©加賀高之
- 河井寬次郎
《筒描法花花文鉢》
- クロード・モネ
《睡蓮》1907年
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